RUN NEET RUN

ニートが持つ才能

「高校を卒業した後引きこもり4年間ニートでした」っていうことを公言し続けて10年。これだけ周りに主張をしていると、不思議なもので「自分もニートでした」「私今ニートです」っていう人に出会う機会が増えてきた。

その人たちとそれぞれのニート体験を共有すると、やはりニートにも色々あるようで、ニートになった理由もニートを抜け出したきっかけもそれぞれ違うことがわかる。

だけど不思議と共通する項目もあることに気が付く。
今日はそんなニートの共通点についてのお話しです。

楽しむ才能

ニートに共通しているのは「ひたすらに時間がある」ということである。これはどのニートにもほぼ共通しているだろう。仕事もしていないし学校にも行っていないのだから当然だが、ニートには「やらなければいけないこと」というのが存在しない。無理やり挙げるとすれば呼吸とかそういう生理現象くらいなもので、ニートはその有り余る時間をどう使うのにも基本的には自由である。

一般の人で言えば「やることのない暇な時間」が永遠に続く感覚である。
日々仕事をしている人であれば、心身を休めて好きなことに時間を使う休息の時間になるのだろうが、ニートにとってはそれがデフォルトなのでむしろ「いかにして時間を使うか」という能力が問われることになる。

だいたい仕事を辞めて一時的にニートになる人はこの暇な時間に耐えられなくなって活動を開始するのだが、ニートを数年続けられるような人間にはこの暇な時間を「楽しむ才能」が備わっているから、ニートで居続けることができる。
お金がなくても、部屋から出なくても、自分にとって何かしら楽しいと思える時間を作り出してしまえる能力が、僕が出会った元ニートの人たちに共通して備わっていた能力だった。

消費じゃなくて創造する楽しみ方

じゃあその「暇な時間を楽しむ才能」とはどんなものなのか。これもとある共通点から見えてきた。

「実況パワフルプロ野球」という野球を題材にしたTVゲームがある。デフォルメされたかわいいキャラクターを操作して、野球の対戦を楽しめるゲームである。
このゲームには「サクセス」という遊び方があって、自分で野球選手を育てることができるものだ。育てたキャラで自分だけのオリジナルチームを作ってペナントレースを遊ぶこともできる。
選手はパワーや守備力など野球に必要な能力を持っていて、それぞれA〜Gまでのステータスがある。基本的にサクセスではより強い選手の育成を目指して遊ぶことになるのだが、「暇を楽しむ能力」を持ったニートはただ強い選手を作るような遊び方はしない。
我々はまず「自分の理想の野球チーム」を想像するところから始める。全てが超一流で全部のステータスが最高の選手ではなく、パワーはあるけど足は遅い将来有望な若手とか、打撃はそれほどでもないけどどの守備位置でも守れて頼れる先輩、といった味のあるキャラを考えて、その理想のステータスに近づけるように選手を育成する。時にはステータスに悪影響を及ぼすような悪い特殊能力までわざとつけるなど、自分が思い描くキャラクター像に近づけるようにゲームを進める。

こういう遊び方をしていると、今自分が遊んでいるゲームソフトが最新のものでなくても、ゲームの機能を遊び尽くしてしまったとしても、それでもまだ延々とゲームを楽しむことができる。いわば、ゲームが持つポテンシャル以上にそのゲームを楽しむことができるのである。

「暇な時間を楽しむ才能」とは、そのものが持つ楽しみ方を「消費」するのではなく、そのものから発想する楽しみ方を自ら「創造」する能力なのである。

そんな能力を持っている僕らニートは、どんなに大量の時間があっても、持て余すことはしない。

暇だな〜と思っていても、気がつけば「暇だな〜🎶」と鼻歌を歌ってしまう。
それくらいどんな時間でも楽しめてしまうのである。

脱して気づいたお得な才能

この暇を楽しむ才能のお得さに気がついたのは2020年にコロナウイルスが流行して、日本全体が大規模な自粛モードになった時であった。自粛が長引くにつれて、テレビでは連日「自粛疲れ」という言葉が飛び交うようになった。どこにも行けない、買い物もできない、家にいるだけで生産性がない、ということにストレスを抱える人が多くいた。

しかし我々楽しむ才能を持った人間は、自粛疲れなど一切感じることがなかった。そもそも我々は「消費」することで楽しんでいるのではなく「創造」することで楽しむことができるので、消費行動が制限されることで楽しむことは一切妨げられることがないのである。
むしろ自粛で時間が増えた分楽しめることが増えたくらいだ。

さらにこの能力にはお得な副産物があって、それは一般的に面白くないものでも楽しめてしまうことである。
例えばいわゆるB級映画を観たとしよう。普通の人なら2時間2千円の時間とお金を「消費」してみた映画が面白くなかったとしたら、単純に「損をした」と思って終わるだろう。
しかし我々は「どこが面白くなかっただろう?」「どこを改善したら面白くなるだろう?」と面白くない映画を観ても楽しむことができてしまう。2時間2千円以上の価値を自ら生み出すことができるのである。

これほど便利な能力はない。

ニートを脱してからも役立つ

このように、ニートが共通してもつ「楽しむ才能」は、ニートを脱してからも大いに役立つのである。それは「人生を楽しむ」という点において、圧倒的な効果をもたらす。

ニートで居る間にはどんなに楽しもうが「所詮ニート」としか思えないが、ニートを脱してみるとその楽しむ能力は人生を豊かにしてくれる。

もしこの記事を読んでいる現役ニートの方がいるなら、いつか脱ニートしてからの心配事は一つ減るということを覚えておいてほしい。

あなたには人生を楽しむ才能がある!

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