おじさん【復刻ブログ】
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※この記事は2014年5月13日にアメブロにて公開した記事を一部調整した復刻記事です。
本日はハローワークの指定来所日のため訓練はお休みでした。
そこでちょっといい話を聞いてきました。
基本的に指定来所日と言うのは、求職中の人がちゃんと就職に向けて活動しているのか、何か困ったことはないのか、という確認をする日です。
特に求職者支援手当て等の支援金などを受給している人は、これをちゃんとしないと受給できなくなったり、場合によっては不正受給とみなされて「給付金返せ!」なんてことになったりもします。
僕の場合は特になにも受給などしていないので、就職に向けた面談、というのがメインになります。
とは言っても、ほんの数分話をするだけなので、
「訓練の方はどうですかー」
とか、
「何か困ったことはないですかー」
なんていうありきたりなやり取りが行われる程度が普通だと思います。
今日もそんな感じだろうと思いながら、番号案内に導かれるままに窓口に行きました。
「おはようございますーよろしくおねがいしますー」
と挨拶した相手は、きれいな白髪の渋いおじさんでした。
話を聞くとどうやら60歳過ぎの方のようでした。
提出した書類に一通り目を通して、ハンコの類をポンっポンっポンっと押した辺りからやっと会話が始まります。
「えーと、今までお仕事をされたことがないのですね?」
うむ、脱ニート活動を始める前ならこの質問だけで僕の心はポッキリ折れていただろうが、今は不思議なもんでだいぶ慣れたものです。
僕は「そうですねぇ」と軽く肯定した。
「では、このWEBデザインというのは、もともと興味が?」
毎回別の人が担当のため毎回同じことを聞かれるのは少々面倒だが、自分のことを話すのはいろんな意味でプラスになるので良しとする。
僕は、一昨年くらいから兄の知り合いのところでWEBサイトの製作や印刷物の作成の手伝いをさせてもらっていたこと、そこでWEBデザインを多少かじったことなどを説明した。
その間「うん、うん」と大きく頷きながら聞いていたおじさんは、僕が話し終えるとあらたまって言った。
「あのね、あなたは素晴らしいよ」
突然のほめ言葉である。
さすがに予想していなかったので、少し動揺して、
「ぉふえ、あ、はい、いや、なんかそんな、急に恥ずかしいですけど・・・」
などとあたふたしていると、おじさんは話の続きを話し始めていた。
「いやね、僕ももう60過ぎだけども、まぁそれなりに色々あったわけね。50過ぎの頃に仕事やめて、それこそ一年くらいニートよ。でも、家族もいるし、子供もいるし、働かなきゃいけない。でも、1社受けても、2社受けても、10社受けても駄目。気づけば46社も落ちてたんだよ。で、47回目で今の仕事に受かったんだけどさ」
おじさんは手を少しまごまごさせながら話を続ける。
「なんで正確に何社って覚えてるかっていうとさ、そのときの応募のデータがパソコンに残っているのよ。さすがに当時は、なんて無駄な一年だったんだー、って思ったよ」
「でもね、その無駄だと思ったその一年ってさ、こうして就職しようとしている人たちと接する中で、すごく役に立ってるのよ。こんな風に話のネタになったりね」
良く見ると、まごまごしてるおじさんの手はしわだらけだ。
「確かに無駄な時間は無駄なんだけど、無駄じゃなかった。って思う、というよりも、そう言えたらいいなーって、この歳でやっと思えたんだよね」
「きっと、君のニートだった時も、いつか必ず無駄じゃなかったって、思えるよ。だから、がんばって」
僕はもう、「はい・・・」と噛みしめるしかできません。おじさんのありがたい言葉ほど身にしみるものはありません。
「ちなみにね、素晴らしいっていうのは、このWEB業界っていうのは、とにかく経験重視なんだよ。だから、君のその“手伝い”っていう経験も必ず役に立つよ、ってことだよ」
これまで何度もハローワークに通って、その度に感じる彼らの「プロフェッショナルさ」というのは本当にすごいです。とにかくやる気がでます。やってやるぞーって。
仮におじさんの話が、来た人みんなに話す決まり文句であったとしても、僕の気持ちは変わらないでしょう。
おじさんの「いつかきっと無駄じゃなかったって思える」という言葉は、僕の脱ニート活動の、あるいはその後の人生の支えになるほどの重みがありました。
「無駄だけど無駄じゃない」
実はここ最近僕がずっとテーマにしてきたことでした。
いつかそう言えるようになりたいと思っていろんなことを考えてはいたけど、なんぼいってもまだ僕はニート崩れです。まだ何も出来ていない僕には、無駄な時間を無駄じゃないと言うことができません。
でも、60歳を過ぎたおじさんでもやっと“そう思いたい”と思ったところだと聞いて、少し安心しました。
今はまだ無駄かもしれないけど、やるだけやってみる。
そう考えようと思います。
おじさんは最後に、「関係ない話ばかりでごめんね」といいながら資料をまとめて、
「君、まだ22歳なんだねぇ。僕がその歳の頃は暴れてたなぁ!」
と笑っていました。
おじさんパワーで、また明日からがんばります!
当時を振り返って
1つ目の復刻記事もそうでしたが、ニートを脱しようと動き出した僕にとって、ハローワークの職員さんたちは本当に支えになりました。見ず知らずのちんちくりんなニートの僕を、決して否定せず、でもときには厳しくもとにかく背中を押してくれました。もしあの時ハローワークの職員さんたちに冷たくあしらわれていたら、もしかしたら今も僕はニートかもしれません。
この記事のおじさんも、当時の僕にものすごい勇気をくれた人でした。
そしてそのおじさんのセリフ。
「無駄だけど無駄じゃない」
今の僕は、ようやく心からそう思えている気がします。自分がニートだった経験も、今様々な人と関わる中でとても役立っています。頭では理解していても体が動かない、不安でしかたがないという気持ちは、動けてしまっている自分ではもう理解することは難しいですが、こうしてニートだった時のことを思い出すと、その不安な気持ちにも寄り添えるような気がします。
僕が今こうして日々を楽しく過ごせているのは、この時のハローワークのおじさんのような人たちのおかげなのだと思います。長い人生の中のたった30分だけの関わりだったけど、きっとおじさんは一生懸命僕を勇気づけようとしてくれていて、そのおかげで僕は進めたんだろう。
そういうものがたくさん積み重なって今の自分があると思うと、自分はとても恵まれていて運がいいんだなと、思います。
僕もあの時のおじさんのように、誰かを勇気づけられる人になりたいと思いました。